映画「犬王」平家物語は読むべき?湯浅監督演出幻のアニメもご紹介

映画「犬王」の正直な感想!

こんにちは!
イラストキネマのオーナー、サオリです。
ご来館ありがとうございます。

今回は映画「犬王」をご紹介します。

原作は室町時代に実在した能楽師・犬王をモデルにした古川日出男さんの「平家物語 犬王の巻」

監督・湯浅政明

脚本・野木亜紀子

キャラクター原案・松本大洋

音楽・大友良英

とビッグネームがそろい、公開前から期待を集めていました。

劇中で大事な役割を担う琵琶法師が語る「平家物語」は読んでおくべきか、唯一無二の表現で有名な湯浅監督が手がけた他アニメなどについて解説しています。

登場人物「友魚(ともな)」は劇中で名前を変えますが、便宜上本記事では「友魚」で統一しています。

監督湯浅政明
声優アヴちゃん
森山未來
柄本佑
津田健次郎
ほか
製作年2021年
製作国日本
上映時間97分
目次

アニメ映画「犬王」あらすじ

アニメ映画「犬王」あらすじ
映画「犬王」の登場人物、犬王と友魚(ともな)

室町時代の京都、猿楽の比叡座の家に異形の子が生まれる。

見た目があまりにおぞましく名前を付けられなかったその子は、身体を布で覆い、顔にひょうたん型の面をつけていた。

自らを「犬王(アヴちゃん)と名付けたその子は、平家の呪いで失明した琵琶法師・友魚(森山未來)と出会う。

舞と歌で人気を博す二人はどこへ行き着くのか。

時代ものなのでとっつきにくさを感じるかもしれませんが、冒頭で南北朝時代について軽く説明されるためすんなり入り込めます。

犬王が奇怪な姿で生まれた理由も、劇中でちゃんと明かされますよ。

古川日出男原作「平家物語 犬王の巻」

「犬王」の原作は古川日出男さんの「平家物語 犬王の巻」。

古川さんは「平家物語」の現代語訳も手がけています。

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実在した犬王について残されている資料は非常に少なく、古川さんは「未知の部分を自分の言葉で埋めていって作った」そうです。

「歴史の授業で習ったこと大体忘れてるけど大丈夫かな…」と不安に思いながら原作を読みましたが、杞憂でした。

一文が短く反復法を効果的に使っているため、リズム感がいいです。

時代ものの小説にありがちな、書いてあることがうまく想像できないストレスを感じずに読めました。

時代ものへの苦手意識を払拭したい方はいい機会になると思うので、ぜひ手に取ってみてください。

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犬王の声は女王蜂・アヴちゃん

本作の主人公・犬王を演じるのはロックバンド・女王蜂のボーカルを務めるアヴちゃん。

声優だけでなく劇中歌の作詞も何曲か担当しています。

「犬王」のように説明的な役割も果たす歌詞を書くのは大変だったそうです。

今回は語り部/狂言回し的な要素がすごくあったので、初めてミュージカル調の歌詞を書いたんです。

いわば説明的な歌詞なんですけれど、ただ説明的なだけじゃなく、やっぱり聴く人をのけぞらせるような言葉も差し込んでいきたい。

そのために譜割りとか、ここで弾けてほしいと思うところの子音・母音の配置とか、すごく細かく当たらせていただきました。

「犬王」パンフレットより

また女王蜂初のデジタルシングル「犬姫」のMVでは、犬王の父を演じた津田健次郎さんと共演しています。

ややグロテスクな描写があります。

「犬王」の湯浅政明監督

「犬王」の湯浅政明監督は、1965年生まれの福岡県出身。

アニメ製作会社・亜細亜堂でTVアニメ「ちびまる子ちゃん」の作画を担当し、フリーのアニメーターとなった後は劇場版「クレヨンしんちゃん」シリーズで設定デザインや作画監督などを務めました。

初の長編アニメ監督作「マインド・ゲーム」で文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞などを受賞しています。

「中毒性が高い」と評される「マインド・ゲーム」は、モデルの水原希子さんも好きな映画に挙げており、今でも人気の作品です。

「犬王」のキャラクター原案を担当した松本大洋さんとは、TVアニメ「ピンポン」でもタッグを組んでいます。

「ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌」

湯浅さんが手がけた作品は「夜は短し歩けよ乙女」「夜明け告げるルーのうた」などもありますが、私が一番紹介したいのは「ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌」

「ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌」あらすじ

まる子たちは図工の時間に「わたしの好きな歌」というテーマで絵を描くことになった。

好きな歌をどう表現していいのかわからず悩んでいたまる子は、絵描きのお姉さんと出会う。

相談するうち絵描きのお姉さんと仲良くなるまる子だったが…。

作中でまる子のクラスメイトの好きな歌と絵が紹介されるとき、音楽と一緒にPVのようなアニメーションが流れます。

そういった音楽主体のつくりは「犬王」とも通じるものがありますね。

湯浅さんは劇中歌「1969年のドラッグレース」「買い物ブギー」の作画と演出を担当。

https://twitter.com/kaki7sophie/status/872216015043649536

「あれ、これまるちゃんだよね?」と疑うほど私が今まで見たどのアニメとも違っていて、釘付けになりました。

「カッコイイ」とも「スタイリッシュ」とも違う異質な魅力があるんですよね。

ぜひいろんな方に観ていただきたい映画なのですが、残念なことにDVD化されていません。

観るとしたらケーブルテレビなどの有料放送や、リバイバル上映などひたすら待つしかないんです。

観ようと思って観れる映画ではないのですが、機会があったらぜひ観てほしい1本です。

「犬王」の感想:思ってたのと違う

「犬王」の感想を一言で言うと

思ってたのと違ってめっちゃミュージカル

です。

「犬王」は映画というよりミュージカル

本作は能のシーンが多く占めるのですが、「能」と聞いて思い浮かべるような場面はありません。

ロックフェスで流れるような音楽と、熱狂的な観客に囲まれながら現代的なダンスを踊るミュージカルのようなつくりに「思ってたのと違うな…」と戸惑いました。

というのも私、ミュージカルが大の苦手。

「犬王」の音楽が刺さったら楽しめたと思うのですが、正直音楽もあまり好みでなく。

この雰囲気が好みな方はどストライクかと。

私が「犬王」に期待していたことは「他のアニメでは見れない表現」でした。

その期待が100%満たされたかというと、正直そこまでではなかったです。

それでも盲目の友魚の視界の表現や、「鯨」の場面は美しく、見惚れるほどでした。

また美しいだけでなく、糸を引くツバなど普通のアニメなら描かないであろうところを描いている点も良かったです。

俺が聞いてやる
お前たちの物語を

犬王と友魚は平家、つまり敗者の物語を歌として語り継ぎます。

この設定だけでもグッとくるのに、実際にほとんど存在を知られていなかった犬王をこうして現代に甦らせた点で、観る前から感極まっていた点はありました。

物語の肝である歌を楽しめなかったのは残念ですが、独自の映像表現は健在で観に行って良かったです。

「犬王」は「平家物語」を読まなくても楽しめる

「犬王」と切っても切れないのが「平家物語」。

「一応読んでおくか」と本を借りたものの、私は途中までしか読めず…。

それでも楽しめましたし、ついていけないということもありませんでした。

「平家物語」を読む時間がない方は、湯浅監督のツイートを読むのがおすすめです。

かなりリサーチされているのでその分ツイートも多く、全部に目を通すのはキツい…という場合は、平家ガニと鯨(イルカ)についてのツイートを見ておけば大丈夫かと。

「平家物語」について知っておきたい!という方は、時間がかかりますがアニメ「平家物語」で予習するのもいいかもしれませんね。

実はこのアニメ「平家物語」と「犬王」は、原作と制作スタジオに共通点があります。

「平家物語」の原作は「犬王」の原作を書いた古川日出男さんの現代語訳。

そして「平家物語」と「犬王」の制作スタジオはともにサイエンスSARUです。

湯浅監督はサイエンスSARUの代表取締役を務めていたこともあり、非常に縁があります。

ただミュージカル要素があまりない「平家物語」を見て「犬王」に期待すると、「思ってたのと違う」となるかもしれないので、そこは注意です。

アニメ「平家物語」はAmazonプライム・ビデオで観れます。

「犬王」の評価

かなり現代的に表現した「犬王」。

他の方はどう評価しているのか、見てみましょう。

映画.comのレビューを参考にしています。

高評価

  • 歌や踊りの演出が新しい
  • キャラクター造形が独特でいい
  • アヴちゃんの歌唱力と森山未來の表現力が圧倒的

能楽のお話なので、演目のシーンはものすごいゆっくりなテンポで進むのかと思いきや予想を裏切られましたね。

「フェスじゃん!」と思ったらグッズにもそれを意識したシリコンバンドが。

https://twitter.com/sciencesaru/status/1529410329280942082

歌のシーンは犬王を演じるアヴちゃん、友魚を演じる森山未來さんがそれぞれ歌っているのですが、こちらもそれぞれ評価されています。

特にアヴちゃんの男とも女とも違う声で歌われると、厳かでありながらどこか今っぽさもありました。

キャラクター原案を担当した松本大洋さんの絵は独特なタッチで人気です。

「かわいい」とか「きれい」で表せるような絵ではないのですが、そこが魅力というか真似できない絵だなぁと思います。

異形として生まれた犬王の姿も、不気味でありながら暗さを感じさせない造形が見事でした。

低評価

  • 歌のシーンが長い
  • 登場人物の関係がよくわからない
  • 歌詞が聞き取りにくく、字幕を表示してほしかった

「犬王」は犬王や友魚のパフォーマンスがメインとなっていて、歌のシーンが長いです。

特定の歌だけでなくすべての歌に尺を取っているので、ミュージカルが苦手な方やキャラクターの関係をメインで見たいという方は低評価になる可能性があります。

https://twitter.com/naonao705han/status/1530392506487427072

犬王と友魚は歌うことで絆を深めていったと思うので、そういう意味でも歌がメインになっているのかもしれません。

そのメインの歌も昔の言葉使いで歌われているので、歌詞を聞き取りにくいところは正直ありましたねw

歌詞が気になる場合はパンフレットに劇中歌の歌詞が載っているので、そちらで確認するのもいいと思います。

まとめ

映画「犬王」のご紹介でした。

湯浅監督はもちろん、松本大洋さんや野木亜紀子さんといったそうそうたるメンバーをそろえた本作。

時代もので一見とっつきにくそうに思えますが、「平家物語」を読んでいなくても楽しめます。

とはいえ予習をしたほうがもっと楽しめるので、湯浅監督のツイートに目を通しておくのがおすすめです。

女王蜂のファン
湯浅監督のアニメが好き
時代ものの苦手意識を払拭したい

という方におすすめです。

上映館はこちらで確認できます。
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イラストキネマのオーナー、サオリでした。

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