こんにちは!
イラストキネマのオーナー、サオリです。
ご来館ありがとうございます。
今回は「ノーカントリー」という映画をご紹介します。
映画で大金が絡むとロクなことになりませんよね。
例にもれず本作もロクなことになりません。
予告編を見ればわかるように、暴力的なシーンもありR15指定もかかっていますが、グロ描写に耐性がない私でもまぁ大丈夫でした。
親切に説明するタイプの映画ではないことから「つまらない」との声もあるようですが、静かに追いかけられる感覚を味わえる、怖い映画です。
映画「ノーカントリー」のあらすじ
大金の入ったカバンを拾ったら謎のおかっぱ男が追いかけてきてめっちゃ怖い。
舞台は1980年のアメリカ。
狩りをしていたルウェリン・モスは、麻薬の取引で銃撃戦になったと思われる事件現場に遭遇。
現場に生存者はほとんどおらず、現場で見つけた大金の入ったカバンを持ち帰ります。
これで金に困らず生活できる…と思いきや、謎の男アントン・シガーに追われることに。
事件を追うエド保安官がさらに二人を追跡し…。
映画「ノーカントリー」いきなり暴力のオンパレード!ニコニコ笑ってバン!
映画「ノーカントリー」は、殺し屋のアントン・シガーが逮捕されるところから始まります。
署に連行されたシガーは、自身を逮捕した保安官を後ろから手錠で絞殺。
映画では特にめずらしくないシーンですが、注目すべきは映画が始まってから5分も経っていないこと。
まさに絞殺せんとするシガーの目を見開いた顔と、一切取り乱すことなく淡々と行動する冷静さに、目標は必ず遂行するシガーの人となりが表れています。
保安官が抵抗しようともがいた靴の跡、手錠が食い込んだ手首の傷も映され、たった今起こった出来事の恐ろしさを見せつけられて肝が冷えるのなんの。
のっけから怖すぎて笑った。
手首の傷の処置を終えたシガーは自身が乗せられたパトカーに乗り、車を奪おうと前を走る一般人に狙いを定めます。
その際、警戒心を抱かせないためかニコニコしながら「車から降りて」と言うのですがこの笑顔が怖すぎるんです。
逃げてー!!
先ほどの絞殺シーン同様、不運極まりない一般人が殺されるところをしっかり見せてきます。
「この映画は目をそむけたくなる暴力を容赦なく見せつけてくるんだな」と早い時点で示してくれるのは、なけなしの親切心でしょうか。
「ノーカントリー」といえばこの人!ボンベを愛用するアントン・シガー
映画「ノーカントリー」の最も暴力的な登場人物が、殺し屋のアントン・シガー。
長身でおかっぱ頭のシガーは、大金を拾ったルウェリン・モスをどこまでも追いかけます。
見た目の威圧感もさることながら、目を引くのはその武器。
酸素ボンベと噴射口のようなものを赤いホースでつないでいて、錠前なんか簡単に吹き飛ばせる威力をもっています。
拳銃より怖い。
この酸素ボンベ、本来は呼吸が困難な患者のために使われるものだと思うのですが、それを人殺しに使うという倒錯ぶりからシガーの異常ぶりがうかがえます。
映画によく出てくる「人を殺すことに快楽を覚えるタイプ」かと思いきや、目の前の相手を殺すかどうかをコイントスで決めるところを見るとそうでもないよう…。
とにかく謎が多く、そこが不気味でもあり魅力でもあります。
まばたきしない、走らない。ハビエル・バルデム演じるシガー
「やる」と決めたことはやり遂げる。
「手に入れる」と決めたものは必ず手に入れる。
そのためなら手段は問わない。
そんな強固な意志のもと動いているからか(?)まばたきが極端に少ないシガー。
後ろで車が爆破しようがお構いなし。
人を殺している最中ももちろん両目ガン開きです。
目力だけで人殺せそう。
殺し屋が出てくる映画といえば、走って追いかけたり派手に撃ち合ったり…というのがお決まりですが、シガーはまばたきもしなければ走りもしません。
常に落ち着いて目標に向かって歩き、確実に獲物を仕留めます。
そんな余裕たっぷりのシガーを演じるのはハビエル・バルデム。
本作でアカデミー賞助演男優賞を受賞しました。
人の道から外れた役をあれだけ演じられるのはすごい…。
「ノーカントリー」は音楽が流れない!?でもそれがいい理由とは?
映画の主題歌やBGMが話題になることってありますよね。
ですが「ノーカントリー」は全くといっていいほど音楽が流れません。
そのため、かすかな足音や風の音がよく聞こえ、息をするのすらはばかられる緊張感があります。
自分もシガーに追いかけられている気分になれて、より映画を楽しめるような生きた心地がしないような…。
だがそれがいい!
流れる音楽といえば、負傷し道端で寝ていたルウェリンを囲んだ謎の楽団が奏でるぐらい。
調べてみると謎の楽団は「マリアッチ」というメキシコで生まれた楽団のようです。
音楽を奏でていた楽団も、ルウェリンが血まみれで負傷していることに気づくとしぼむように演奏を止めます。
この陽気な音楽と悲惨な状況のギャップがすごく笑えます。
暴力と対比するかのような美しい風景が満載の「ノーカントリー」
楽団に自身と同じように血まみれの札を差し出し「医者を」とルウェリンが頼む場面は、状況に似つかわしくなく美しいです。
このシーンだけでなく、ルウェリンが事件現場に戻った際の朝焼け、のどかな昼下がりの街など、平和そのものといった景色が映画「ノーカントリー」では多く映されます。
風景が美しければ美しいほど暴力を強調していて「こういう映像でしかできない表現、最高…!!」と打ち震えました。
「ノーカントリー」の原題と原作タイトルから見えるもの
映画「ノーカントリー」の原題は「No Country for Old Men」、原作は「血と暴力の国」というタイトルの小説です。
英語が苦手なので自信はありませんが、映画を見る限りでは「老人が住めないような、血と暴力にまみれた国」という意味ではないかと。
モスとシガーを追跡するエド保安官が若い保安官に、ある残酷な事件について書かれた新聞記事を読んで聞かせるシーンがあります。
思わず吹き出してしまう若い保安官に「俺も笑ってしまうことがある。笑うしかできない」とこぼすエド。
冒頭の絞殺シーンで文字通り笑うしかなかった私は、この「笑うしかできない」というセリフに共感せざるをえませんでした。
「おもしろい」から起こる笑いではなく、「どうしようもなくて」出る乾いた笑い。
は、はは…。
原題の「Old Men」は老いたエド保安官だけでなく、ルウェリンも指していると思います。
実はルウェリンは国のために戦ったベトナム戦争帰還兵。
メキシコからアメリカに戻ろうと国境検問所で尋問を受けた際も、ルウェリンがベトナムに出征していたことがわかるとすんなり通してくれます。
そんなルウェリンが、ベトナム戦争を知らないであろう若者にいいように金をねだられるシーンがあります。
エド保安官が「昔の人の話を聞く機会があれば聞くようにしていた」ともぼやいていたことから、エド保安官とルウェリンは、他人、特に自分より上の世代への敬意を払っているのでしょう。
ですがそんな敬意を払わない、暴力にものをいわせる人間によって彼らの安寧の地は侵食されつつある。
そんな怖さを描いた映画なのだと思います。
まとめ
以上、映画「ノーカントリー」の感想でした。
派手なアクションを求める人は「つまらない」と思うかもしれませんが、私はとても好きな映画です。
血が噴き出したり腕がちぎれそうになったり…といったグロいシーンはあるものの、さほど気になりませんでした。
殺し屋に追いかけられる怖い気分を味わえるのが一番のおすすめポイントですね!
美しい景色と暴力のコントラストが効いているのもたまりません。
気になった方はぜひ観てみてくださいね。
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イラストキネマのオーナー、サオリでした。
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