こんにちは!
イラストキネマのオーナー、サオリです。
ご来館ありがとうございます。
今回は映画「TAR/ター」をご紹介します。
アカデミー賞6部門にノミネートされ、“ケイト・ブランシェット史上最高傑作”と名高い本作は、現代音楽界の頂点に君臨する女性指揮者リディア・ターをめぐる権力の物語です。
権力を握った人間の傲慢さ、振り回される弱者の不信感が混ざり合って迎える衝撃のラストは、誰にも予想できません。
その衝撃を味わってもらうため、本記事ではネタバレなしの感想と、鑑賞後の考察がはかどる資料もご紹介します!
最後まで読んでいただけるとうれしいです。
監督 | トッド・フィールド |
キャスト | ケイト・ブランシェット ノエル・メルラン ニーナ・ホス ほか |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2022年 |
上映時間 | 158分 |
映画「TAR/ター」あらすじ
現代音楽界を牽引する女性指揮者、リディア・ター(ケイト・ブランシェット)。
アメリカの五大オーケストラで指揮者を務めた後、ベルリン・フィルの主席指揮者に就任している。
指揮者としてだけでなく作曲家としても活躍し、EGOT(エミー賞、グラミー賞、オスカー、トニー賞を受賞した人)として輝かしい経歴を持つ。
アシスタントのフランチェスカ(ノエル・メルラン)、パートナーでありオーケストラのコンサートマスターでもあるヴァイオリン奏者・シャロン(ニーナ・ホス)もターの厳しい要求に応えていた。
さらに自伝の出版、ベルリン・フィルで唯一録音できていないマーラーの交響曲第5番のライブ録音も控えている彼女だったが、以前指導した若手女性指揮者・クリスタが自殺したとの報せが届く。
そこから彼女の生活に不穏な影が立ち込めていく…。
トッド・フィールド監督
「TAR/ター」の脚本、監督を務めるのはトッド・フィールド。
本作はなんと16年ぶりの作品です。
彼は俳優としてキャリアをスタートさせ、スタンリー・キューブリックの「アイズ・ワイド・シャット」にニック・ナイチンゲール役で出演しています。
ビルに秘密のパーティーの存在を明かすピアニスト役ですね。
監督は、ターを演じるのはケイト・ブランシェット以外考えられず、もし断られていたら本作を作ることはなかったと語っています。
実は監督は10年ほど前にケイト・ブランシェット主演の映画を撮ろうと脚本を書き、彼女とミーティングまでしていましたが実現しませんでした。
その時に受けた印象も、今回のキャスティングに影響しているのかもしれませんね。
ケイト・ブランシェットにできないことなどない!
本作の主役・ターを演じるのはケイト・ブランシェット。
有名オーケストラの指揮者を演じるにあたって指揮はもちろん、ピアノ、ドイツ語、アメリカ訛りの英語をマスターしました。
劇中で彼女が何度かピアノを弾くシーンがありますが、吹き替えなしですべて彼女が弾いているとのこと。
実は彼女、昔ピアノを習っていたそうですが、ある時練習してこなかったことを先生に見抜かれ「あなたはピアニストではなく、俳優だと思う」と言われたことがあるそうです。
先生の慧眼すごすぎない?
ケイト・ブランシェットといえば、映画「アイム・ノット・ゼア」でボブ・ディランを演じたことでも有名です。
性別を超えた美しさを持つ彼女が、「TAR/ター」では男性用と思われる服に身を包んでいて、これがま~カッコイイんですよ!
その美しさがターのカリスマ性を引き立てていて最高でした。
「TAR/ター」ネタバレなし感想:ささやかな人物描写が最高
「TAR/ター」はあらゆるところに伏線が散りばめられていて、1回観ただけですべてを理解するのは難しい映画です。
そのため観た直後の私の正直な感想は
「え、どゆこと?」
でした。
ネタバレなしとしたいので詳しくは書けませんが、ラストがとにかく衝撃的なんですよね。
そもそも何が行われているのかわからなかったのですが、「TAR ラスト 解説」でググったら説明が出てきて安心しました。
この映画の冒頭に、ターが床に落としたレコードを足で踏みつけ横へ押しやる映像があります。
およそ音楽に携わる人物とは思えない行動にかぶせながら彼女の華麗な経歴が長々と読み上げられ、彼女が自身を誰よりも優れた人間だと思っていることが読み取れますね。
けど一方で、そんな彼女でも緊張したり追い詰められたりする場面も描かれていて、ターの人物描写がすごく巧みでした。
彼女は常にどこかで「今のポジションを誰かに奪われるのでは」と怯えています。
そういった怯えは一切表に出していないものの、アシスタントやパートナーにいたるまで、周りの人間を心の底から信用していません。
彼女が周りの人間に求めるのは愛情でも信用でもなく、“服従”のみ。
当然周りの人間も、彼女に不信感を持つようになります。
そういった不信感が、ターが指導した若手女性指揮者・クリスタの自殺をきっかけに加速。
そこから一気にホラーの様相を呈していきます。
私は気づけなかったのですが、クリスタの死後、彼女らしき人影が映っている場面があるとか。
人間としてはドクズのターですが、
「この人に迫られたら断れないだろうな」
と思わせるカリスマならではのパワーがあるんですよね。
独裁者の周りってこういう見えない圧力が常に漂っているんだろうなぁ…。
ハッピーエンド?バッドエンド?
さて衝撃のラストについて、ハッピーエンドかバッドエンドか、観た人によって解釈が分かれるようです。
私は最後のシーンで何が行われているのかを知って、最初こそ「えっ…」と愕然としましたが、今は「あのラストはターの音楽に対する姿勢を表していたんじゃないかな」と思っています。
上にも書いた通り、周囲の人間に対するターの態度はひどいものでした。
ですが彼女は音楽に対しては作曲家の意図を考え、オーケストラの団員たちにも理解を促します。
他人に対しては傲慢極まりないのですが、音楽に対しては真摯なんですよね。
そう考えるとあれは彼女の新たなスタートと考えられ、私はハッピーエンドだと思いました。
Twitterでも検索してみるとハッピーエンドと解釈している人が多いみたいですね。
「TAR/ター」鑑賞後に!考察の答え合わせはコレでできる
「TAR/ター」はいたるところに伏線が張り巡らされていて、先ほども書いたように1回観ただけではとても理解できません。
ですが謎を解くにはクラシック音楽の知識などが必要で、自力だけで考察するにはかなり大変です。
そこで鑑賞後の考察の答え合わせにオススメなのが、映画評論家・町山智浩さんのnote。
有料ですが価格は200円とかなり良心的で、73分の音声が聴けます。
実質無料!
「TAR/ター」を観たほとんどの人が思うであろう、
「アレってなんだったの?」
「あの会話はどんな意味があったの?」
という疑問に答えてくれています。
それだけでなく「え、あのシーンにもちゃんと意味があったの!?」という発見もありました。
まずは「TAR/ター」を観て、町山さんの音声を聞いてもう1回観に行くのがオススメです。
私ももう1回観に行きます。
「TAR/ター」の評価
ケイト・ブランシェットが真骨頂を発揮した、映画「TAR/ター」。
観た人はどのように評価しているのか、見てみましょう。
良い評価
- 人物の描き方が上手い
- いたるところに伏線が張られていておもしろい
- ターはケイト・ブランシェットにしか演じられない
本作の主人公・ターは傲慢で非常にプライドが高い人物です。
映画の冒頭でそれが充分に示されますが、ところどころ彼女の神経質な面や繊細な性格が見えます。
彼女を理解しようと思って観ていないと見逃してしまうぐらいの描写で、こういった説明をセリフでなく言動で説明してくれるのっていいですよね。
なんといっても主役を演じたケイト・ブランシェットの演技力が高く評価されています。
私が一番「どうやっているの?」と思ったのが、終盤のとあるシーン。
序盤では美しく強気な態度を崩さなかった彼女が徐々に追い込まれて爆発するところで、
「どうやってあのビジュアルを作り込んだんだろう…」
と思いました。
メイクとか照明もあるんでしょうけど、孤立した人間にしか辿り着けない静かな狂気が滲み出ていて怖かったですね。
悪い評価
- 1回観ただけではわからなかった
- 主役をあえて女性指揮者にする必要はあったのか?
- クラシック音楽の知識がないと会話についていけない
本作ではターがとにかくしゃべり倒します。
1回しゃべり始めるととにかく長いんです(彼女が話し始めると誰にも止められない点も、彼女の支配体制が如実に表れていますね)。
しかも話の内容がクラシック音楽の知識がないと理解できない部分もあり、私はサッパリわかりませんでしたw
このあたりの話はもちろん理解できたほうがいいですが、クラシック音楽の知識がなくても権力を握った人間の物語として楽しめますし、今からこの映画をすべて理解するための知識を身につけるのは正直難しいと思います。
公開終わっちゃう。
なので音楽の知識がなくても、
とにかく観に行きましょう!
というのもこの映画はいたるところに伏線が張り巡らされていて、1回観ただけで気づけたり理解できたりする人は稀だからです。
私は観終えてからアレコレ考えるのが好きなので、この映画はかなり好みですが、そうじゃない人は低評価となるかもしれませんね。
女性指揮者である意味については、パンフレットに掲載されているサウンド&ビジュアル・ライターの前島秀国さんのレビューが参考になると思います。
「TAR/ター」はジェンダー、キャンセルカルチャー(主にSNS上で過去の言動などを理由に著名人などを社会から排除しようとすること)といった要素が盛り込まれている、かなり現代的な映画です。
ターが主席指揮者を務めるベルリン・フィルの性格と歴史、そして現在目にすることが多くなったジェンダー問題の関係を知れば、ターという人物をより深く知れると思いますよ。
まとめ
映画「TAR/ター」のご紹介でした!
1回観ただけですべてを理解するのはほぼ不可能なので、とっつきにくく感じるかもしれませんが、観れば観るほど「あの場面はこんな意味があったのか!」という気づきを得られると思います。
とはいえ初見はやはり新鮮な気持ちで楽しんでいただきたいので、感想はできるだけネタバレなしとしました。
とにかく謎が多く、観たら考察したくなること間違いなしの本作。
答え合わせはぜひ町山さんのnoteでしてみてくださいね。
きっと新しい発見がありますよ。
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イラストキネマのオーナー、サオリでした。
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