映画「ベイビー・ブローカー」是枝裕和が明かす想い【2回観た感想】

映画「ベイビー・ブローカー」の感想

こんにちは!
イラストキネマのオーナー、サオリです。
ご来館ありがとうございます。

今回は映画「ベイビー・ブローカー」をご紹介します。

本作は第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門でエキュメニカル審査員賞、主演のソン・ガンホさんが最優秀主演男優賞を受賞し二冠を達成しました。

エキュメニカル審査員賞は、人間の内面を豊かに描いた作品に贈られる賞です。

監督・脚本・編集を担当した是枝裕和さんの「そして父になる」「万引き家族」もカンヌで賞を受賞しており、是枝さんの評価は確固たるものとなっています。

赤ちゃんを高く売る。
それだけのはずだった。

赤ちゃんポストに預けられた赤ん坊を売るベイビー・ブローカーの旅を描いた本作は、生まれてきたことを肯定してくれる、静かな感動に満ちた映画です。

この映画を作るにあたって是枝さんが影響を受けた事件と、そこから生じた想い、私の感想と好きなシーンについて書きました。

「ベイビー・ブローカー」の舞台が韓国になった理由などについてはこちらの記事で書いています。

監督是枝裕和
キャストソン・ガンホ
カン・ドンウォン
ペ・ドゥナ
イ・ジウン
イ・ジュヨン
制作国韓国
制作年2022年
上映時間130分

ややネタバレを含みます。

目次

映画「ベイビー・ブローカー」あらすじ

映画「ベイビー・ブローカー」あらすじ

赤ちゃんポストがある施設で働くドンス(カン・ドンウォン)と、クリーニング店を営むサンヒョン(ソン・ガンホ)

2人は赤ちゃんポストに預けられた赤ん坊を連れ去り、高く売ろうと画策する。

ところが翌日、赤ん坊を預けた母親・ソヨン(イ・ジウン)が施設に戻ってきたことで、3人で養父母探しの旅に出ることに。

だが3人の養父母探しの旅は、スジン刑事(ぺ・ドゥナ)と後輩のイ刑事(イ・ジュヨン)に尾行されていた。

「赤ちゃんを売る」というあらすじなので怖い話かと思いきや、全体的にほのぼのした雰囲気です。

とはいえ、「赤ちゃんが欲しい」という人に実際に赤ん坊を会わせると

「写真よりかわいくない」

「眉毛薄くない?」

とまるでショーウィンドウに並べられた商品を見ているかのように文句を言われたり、値段の相場が女の子より男の子のほうが高かったり、闇がちらりと見える場面もあります。

主演:ソン・ガンホ

「ベイビー・ブローカー」の主演を務めるのは、韓国を代表する俳優ソン・ガンホさん。

彼の代表作といえば、やはり「パラサイト 半地下の家族」でしょう。

是枝さんとソン・ガンホさんの出会いは15年前の釜山映画祭。

「一緒に映画を作りたい韓国の役者は?」と聞かれた是枝さんが「ソン・ガンホさん」と答えたらその日に本人と出会えた、とインタビューで答えています。

「ベイビー・ブローカー」は、ソン・ガンホさんが笑顔で話しかけながら赤ちゃんを売るシーンを是枝さんが思いついたのが始まりであることから、ソン・ガンホさんの存在はとても大きいです。

是枝裕和監督:「ベイビー・ブローカー」は命をどう肯定できるか

映画「ベイビー・ブローカー」の是枝裕和は命の肯定を目指した

本作の脚本・監督・編集を務めたのは是枝裕和さん。

是枝さんは2022年6月29日放送のNHK「クローズアップ現代」に出演しました。

この番組で是枝さんは、相模原障害者施設殺傷事件の植松聖死刑囚と接見したことが「ベイビー・ブローカー」を作るきっかけの一つになったと明かしています。

相模原の事件とかがあって、ちょっと紹介していただいて(植松死刑囚に)会いに行ってるんですよ。

そこでお話ししたりしたことも大きかったかなと思うんですけど。

“生きるに値しない命”があるのかっていうことが、なにかすごくこう…前提が崩れてきているっていう気がしてるんだよね。

「自己責任」って言葉が声高に言われるようになって以降だと僕は思いますけども。

いろんなものが本人の責任であって、それを社会の責任というふうには考えない人たちの声のほうが大きくなってきた、というんですか。

いろんなものが「効率」で考えられるようになって、役に立つか立たないかっていうことが命の基準に関しても適用されはじめているという気がしていて、そのことに抗いたいなという気持ちがある。

命をどう肯定できるかということも、初めにあった問いではないですけども考えながら作りました。

NHK「クローズアップ現代」

相模原の事件に影響を受けた点は、早川千絵監督の映画「PLAN75」とも通じています。

劇場公開された「PLAN75」は長編映画ですが、もともとはオムニバス映画「十年 Ten Years Japan」のうちの一作(短編映画)として制作されました。

この「十年 Ten Years Japan」の総合監修を務めたのが是枝さん。

同じ事件に影響を受けた映画が、あまり日を空けずに公開されるのはめずらしいですね。

それほど「自己責任」という言葉と考え方が浸透してしまっているのかもしれません。

「ベイビー・ブローカー」の感想:今年ナンバーワンかも

映画「ベイビー・ブローカー」はめっちゃ良かった!

私は是枝さんの映画の熱心なファンではなく、「ベイビー・ブローカー」も正直そんなに期待していなかったのですが、「とても良かった」という感想を抱きました。

年末に今年観た映画を振り返った時、まずこの映画を思い出すでしょう。

ソヨンは「子どもを捨てた母親」として、ドンスやスジン刑事から冷たい目で見られます。

特にスジン刑事は「捨てるなら産むなよ」と厳しい言葉を吐いたり、後輩から「あの女(ソヨン)には厳しいですね」と言われたりするほどソヨンを軽蔑していました。

ドンスがソヨンに厳しい理由は劇中明らかになるのですが、スジン刑事の事情はハッキリとは描かれません。

それでも彼女の事情をうっすらと想像でき、彼女がソヨンに厳しい態度を取る理由もなんとなくわかります。

私が一番好きなのが、このスジン刑事が車中で彼女の夫に電話をするシーン。

映画「ベイビー・ブローカー」のスジン刑事が夫に電話するシーンがお気に入り

張り込み中のスジンに食べ物や着替えを差し入れしてくれる優しい夫なのですが、彼女はなぜかそっけない態度を取ります。

この態度も、おそらく意味があるのでしょう。

車中から電話をかけたスジンは着替えを持ってくるよう夫に頼むのですが、彼女が話したいことはきっと別のことなんですよね。

それから外で流れている音楽を夫に聴かせようと、携帯電話を持った手を車の窓から外に出す彼女が健気というかいじらしいというか、すごく愛おしいんです。

彼女が普段は決して人に見せない心の奥底にふれた気持ちになりました。

スガシカオ風に言うと「心のやらかい場所」。

この時彼女が何を思って、本当は何を話したかったのかは明かされないのですが、彼女が夫との関係について向き合おうとしているように見えて心を打つんです。

このシーンを観るためにもう1回映画館に行ったぐらい心に残っています。

ちなみにあと1回行く予定。

「ベイビー・ブローカー」評価

カンヌ二冠を達成した「ベイビー・ブローカー」。

実際に観た方はどのように評価したのでしょう。

映画.comのレビューを参考にしています。

高評価

  • 俳優が役にマッチしていた
  • 登場人物の心情の変化が感じられて良かった
  • 母親ばかりが責められて父親は責められない理不尽さをちゃんと描いていた

「ベイビー・ブローカー」はプロットの段階で是枝さんが主演の3人を当て書きしていました。

その影響か「俳優が役にマッチしていた」と評価する声が多いです。

特にソン・ガンホさんは、一見人のいい笑顔で赤ちゃんを売るという怖い役にはまっていましたね。

ソヨンは「子どもを捨てた母親」として、特にドンスから非難されるような態度をとられています。

ところが一緒に過ごすうち徐々にお互いの理解を深め、疑似家族のような雰囲気になるんです。

終盤の観覧車の中でソヨンとドンスが話す場面は、この物語の根底にある「生まれてきたことの肯定」を表していて良かったですね。

低評価

  • 盛り上がる場面がないので眠くなった
  • 「万引き家族」系で「またか」と思った
  • 登場人物の背景やセリフの意味などがぼやっとしていて楽しめない

「ベイビー・ブローカー」は、わかりやすい起承転結や予想を裏切るような展開はないため、退屈してしまう方もいそうです。

正直私もちょっと眠くなったw

登場人物の背景も少しずつ明らかになってくるのですが、ぼんやりとしかわからない登場人物もいます。

なので「ちゃんと正解を知りたい」という方は、低評価になるかもしれません。

私も「何について話してるんだろう」と思う場面はありましたが、あれこれ想像するのが好きなので、ああでもないこうでもないと考えています。

友達と観に行って帰りにいろいろ話したり、あるいはTwitterなどでいろんな人の意見を見たりすると楽しめるかもしれません。

まとめ

映画「ベイビー・ブローカー」の感想などのご紹介でした。

生まれてこなかったほうがいい命はあるのか?

望まれずに生まれるより、生まれないほうが幸せなのか?

是枝さんが「命の肯定」について考えながら撮った本作は、そういった問いに対し生まれてきたことを肯定してくれる温かさがあります。

  • ロードムービーが好き
  • 心がじんわり温まる映画が観たい
  • 「自分は生まれてこないほうが良かったのでは?」と思うことがある

そんな方におすすめです。

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イラストキネマのオーナー、サオリでした。

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