映画「ブルーバレンタイン」をカップルで観てはいけない理由

映画「ブルーバレンタイン」は絶対にカップルで観てはいけない

こんにちは!
イラストキネマのオーナー、サオリです。
ご来館ありがとうございます。

今回は映画「ブルーバレンタイン」をご紹介します。

ある男女が出会ってから結婚するまでと、その結婚生活を映した本作。

愛し合って結婚した二人はともに人生を歩んでいけるのか?

「カップルで観てはいけない」といわれるのはなぜなのか?

似ている映画や評価などについてもご紹介します。

結末に関するネタバレがあります。

目次

映画「ブルーバレンタイン」あらすじ

「ブルーバレンタイン」あらすじ

夫・ディーン(ライアン・ゴズリング)と妻・シンディ(ミシェル・ウィリアムズ)は娘と3人で暮らしている。

病院で熱心に働く妻・シンディと、朝から酒を飲み仕事を適当にこなすディーン。

顔を合わせれば口論する二人だが、かつては愛し合っていた時期があった…。

始まって5分もしないうちにシンディーがディーンに心底うんざりしていることが表情、口調、態度、彼女がまとっている空気すべてから伝わってきて、映画というより夫婦の生活をのぞき見している気分になります。

映画「ブルーバレンタイン」のあらすじ

一方でディーンが理想的な父親であることもわかるから責められません。

永遠に変わらない愛なんて、ないの

そう掲げる本作は、「どちら一方が悪い」という話ではないのが観ていて辛く、結婚生活を続けることの難しさを容赦なく突きつけてきます。

デレク・シアンフランス監督の実体験

「ブルーバレンタイン」は、20歳の時に両親が離婚したデレク・シアンフランス監督の実体験から着想を得ています。

アメリカ出身の彼は10代の頃、「マーティン・スコセッシ監督を通して映画を知った」とインタビューで語っていました。

スコセッシといえば「タクシードライバー」「アイリッシュマン」が有名ですが、黒澤明の「夢」ではゴッホ役として出演しています。

「ブルーバレンタイン」の後に監督した「光をくれた人」でも夫婦にスポットライトを当てており、「夫婦」は監督にとって興味深いモチーフなのかもしれません。

愛情深い夫を演じたライアン・ゴズリング

「ブルーバレンタイン」でディーンを演じたライアン・ゴズリングの代表作といえば、「きみに読む物語」でしょうか。

良家の子女に恋をした貧しい青年と「ブルーバレンタイン」のディーンは、一途に一人の女性を愛し続ける点や、「釣り合わない」といわれる相手と恋に落ちる点が共通しています。

ロマンチックで愛情深い役をやらせたら、彼の右に出る者はいないでしょう。

デレク・シアンフランス監督の「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命」でも起用されており、かつての恋人・ロミーナと子どもを養うため犯罪に手を染める役を演じています。

彼は本作での共演がきっかけで、ロミーナを演じたエヴァ・メンデスと結婚。

現在は二人の娘さんがいるそうです。

ニコニコしながら子どもと遊んでるのが目に浮かぶわぁ…。

「ブルーバレンタイン」と似た映画

夫婦の結婚生活やカップルが結婚するまでを描いた映画はたくさんあり、中には「ブルーバレンタイン」と似ている、といわれる映画も。

本作と似た映画を、さらっとご紹介します。

500日のサマー

「ブルーバレンタイン」は結婚している現在の映像に、出会ってから結婚するまでの過去の思い出が差し挟まれています。

「500日のサマー」も、主人公のトムがサマーと出会ってから会わなくなるまでの500日間を時系列をバラバラにして見せており、「似ている」と思いました。

こういう見せ方をされると、仲良くなったと思ったら次のシーンではギスギスしていて「何があったの?」と気になるんですよね。

「なぜこうなったのか」と考えざるをえませんし、幸せだったころと倦怠期のコントラストが際立つ見せ方を効果的に使っています。

花束みたいな恋をした

「花束みたいな恋をした」も、絹ちゃんと麦くんというカップルの数年間を描いた映画です。

こちらは時系列通りに話が進むこともあり、私はあまり「似ている」とは思わなかったのですが、この意見を見てすごく納得しました。

「花束」の二人はお互いの変化によって徐々にすれ違っていくのですが、その原因の一つが麦の就職。

就職して大人になろうと奮闘する麦と、働きながらでも好きなものは好きなままでいたいという絹のすれ違いは、多くのサブカルカップルの共感を呼び起こしたのでは。

「どうしたら麦と絹は別れずにいられたか」を考えた時、「麦が就職せず好きなことを続けていたら…」と思いましたが、現実問題それでも別れていたでしょうね。

お金って大事だもの…。

カップルで「ブルーバレンタイン」を観てはいけない理由

「ブルーバレンタイン」の特徴として一番に挙げられるのが“生々しさ”

お互いへの不満が積もっているせいで些細なことが口喧嘩の火種になるのも、話し合いで心を通わせるのが無理なところまで来てしまっているのも、手遅れであることが嫌というほど伝わってくるんです。

出会ったばかりの二人を見ると「こんなに幸せそうなんだから、もしかしたらやり直せるかも…」と思うものの、現在の冷めきった二人を見ると「やっぱりダメだ…」と芽生えたばかりの小さな希望を根こそぎ摘み取られます。

幸せだった過去を見せられた後にまともな話し合いもできなくなった二人を見せられると、落差がすさまじいです。

最終的に二人は離婚するのですが、幸せな過去も含めた二人のそれまでを見せられた私は「そうするしかない」としか思えませんでした。

「もう別れるしかないでしょ」と反論の余地を一切与えられず夫婦関係が破綻する様を見せられた日には、結婚願望なんて1ミリも残りません。

映画「ブルーバレンタイン」を観ると結婚願望が粉々に打ち砕かれる

カップルでこの映画を見た日には「私たちもいつかこうなるかも…」と考えてしまうでしょう。

「結婚前に価値観のすり合わせをしておきたい」という猛者にはいいかもしれません。

その際は自己責任でお願いします。

「ブルーバレンタイン」を観た感想

「ブルーバレンタイン」を初めて観た時はまだ映像配信サービスがなく、DVDをレンタルしました。

レンタル期間は一週間で、借りたその日に観たらラストの絶望感にどハマりしてしまって、レンタル期間中は毎日観ましたね。

どうかしてた。

なんでそんなハマったかというと、厳しい現実をひたすら突きつけてくるのが良かったんです。

映画なんだからいくらでも都合のいい展開にできるのに、「結婚は甘くないぞ!」と教えてくれる姿勢はもはや親切心の塊でした。

映画「ブルーバレンタイン」は結婚の厳しさを教えてくれる

鬼のような厳しさはもちろん、細部もすごくいいです。

車の中で聴く音楽とか着ている服の色とか、そういう細かいところでシンディとディーンが合わないことを示してきます。

そんな中1回だけ、二人の服の色がかぶるんです。

それもタイトルの「ブルー」と真逆の

結末を知っていると、二人が同じ気持ちでいるだけで尊くて仕方ないんですよ。

たとえ別れることになったとしても、こんなに幸せな時間を共有できてるなんて奇跡だなって、どんな映画のラブシーンより美しく見えるんです。

最初に観た時は離婚する二人の絶望感が重くのしかかってきましたが、繰り返し観ると幸せだった頃の二人の姿も突き刺さるようになって、結果全編通して辛い

映画「ブルーバレンタイン」は観るのが辛い

繰り返し観るうちに印象が変わるシーンはあるのに、「別れるしかない」という結論は何回観ても変わらないのが残酷です。

映画を観た後ってたいてい「おもしろかった」とか「すごかった」とかそういう一言が出てくるんですけど、この映画はとても一言で感想をまとめられませんでした。

離婚は回避できたのか?

ここまで書いてきたように二人は離婚するのですが、

「どうしてこうなっちゃったんだろう」

「離婚を回避する方法はなかったのか」

観終わってからいろいろ考えられるのがおもしろくて、その時考えた答えを確認するために繰り返し観ました。

そうして一生懸命考えて出した答えをこの映画はぶち壊してくるんですよ。

映画「ブルーバレンタイン」離婚を回避する方法はない

「離婚を回避する方法がなにか、なにかあるはずだ…!」と思いながら観ても、どうしても見つけられないんです。

シンディがディーンの考えを受け入れていたら。

ディーンが情熱を注げるものを家族以外に見つけていたら。

結局そこにたどりつくんですが、向上心のあるシンディと、家族にしか情熱を注げないディーンは歩み寄れないんですよね。

「離婚」という結末も悲しいですが、ディーンはシンディ以上に愛せる女性をこれから先見つけられないでしょうし、シンディをディーン以上に愛してくれる男性もいないだろうことが一番心にきます。

「ブルーバレンタイン」の評価

観るのに相当な覚悟を要する「ブルーバレンタイン」。

他の方はどう評価したのでしょう?

高評価

  • 主演二人の演技がすばらしい
  • 愛の変わりようをとても上手く表現している
  • 女が相手を「もう無理」と思ったら最後。そういう気持ちの描き方がリアル

主演のライアン・ゴズリングとミシェル・ウィリアムズの演技は、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞にノミネートされるぐらい評価されました。

もう演技というかドキュメンタリーを見せられているぐらいの生々しさがあって、おかげでダメージ倍増でしたね。

最高。

本作は映画評論家の町山智浩さんも公開当時、「今年のベストワン」とラジオで絶賛していました。

自身の著書「トラウマ恋愛映画入門」(なんつータイトル…)の表紙に使うぐらいなので、相当お気に入りなのでしょう。

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ちなみに私がこの映画を観たきっかけはこれ。

観た後に「どうすれば離婚をせずに済んだか」など友達と話し合うのも楽しいと思います。

あくまでも友達と。

低評価

  • ラストがかわいそうすぎる
  • 恋愛とか結婚をしたくなくなる
  • ダメ男となぜ別れないのかわからない

シンディかディーンどちらかに共感すると、相手の非ばかり見えてイライラするようです。

「怖すぎてもはやホラー」という意見も結構あり、笑ってしまいました。

気持ちはわかる。

観た後はとても前向きな気分になれないので、そういうのが苦手な人は当然低評価になるでしょう。

まとめ

カップルで観てはいけない映画「ブルーバレンタイン」のご紹介でした。

破格の絶望感を味わえる映画であることが伝わったでしょうか?

「恋愛がうまくいっている」「結婚が決まった」という方は間違っても手に取らないでください。

「ブルーバレンタイン」から遠く離れた安全な地で幸せを守ってください。

離婚経験者の気持ちを知りたい
生半可じゃない絶望感に沈みたい
愛し合って結婚したのに別れる過程を知りたい

そんな人におすすめです。

「ブルーバレンタイン」はAmazonプライムで観れます。

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