こんにちは!
イラストキネマのオーナー、サオリです。
ご来館ありがとうございます。
今回は映画「恋する惑星」をご紹介します。
現在実施されている、映画監督ウォン・カーウァイが過去作を自らの手で4Kレストアするプロジェクト。
「レストア」とは「復元」という意味で、今回の場合はビデオ化などの際に変更されたアスペクト比や画面サイズを劇場公開・撮影時のものに変更したり、公開当時は存在しなかった出力システムで音声を再構成したりしています。
そうしてレストアされた5作品が上映中であり、「恋する惑星」もその一つ。
公開されてから30年近く経つのに、満席が続くほどの人気作です。
あのクエンティン・タランティーノが絶賛した一方で、「意味不明」「つまらない」と言う人もいるこの作品について、そう言われてしまう理由や魅力を考察してみました!
今後の映画の観方が変わりそうなぐらい影響を受けた私としては、とにもかくにも今のうちに映画館に観に行ってほしい作品です。
特に「映画だから映像表現とか構図を楽しみたいけど、いつもストーリーばかり追ってしまう」という方は、今までとは違う視点で楽しめると思います。
とにかく映画館へGO!
監督 | ウォン・カーウァイ |
キャスト | トニー・レオン フェイ・ウォン ブリジット・リン 金城武 ほか |
製作国 | 香港 |
製作年 | 1994年 |
上映時間 | 100分 |
映画「恋する惑星」あらすじ
エイプリルフールに失恋した刑事223号(金城武)は、元恋人を忘れるためその夜出会った女に恋をしようと決めた。
223号が金髪の女(ブリジット・リン)と出会った一方、小食店の店員フェイ(フェイ・ウォン)は、店にやって来た刑事633号(トニー・レオン)に恋をする。
金城武の“その時、ふたりの距離は0.1ミリ 6時間後、彼女は彼に恋をした”というモノローグが印象に残る本作の前半は刑事223号、後半はフェイの恋模様が描かれます。
ちなみに「223号」「633号」は認識番号。
本作は当初三つの物語から構成される予定でしたが、三つ目の殺し屋の物語は映画「天使の恋」へと引き継がれました。
「恋する惑星」ウォン・カーウァイ監督
「恋する惑星」の監督・脚本を担当したのは、ウォン・カーウァイ。
1958年に上海に生まれ、5歳の時に家族と共に香港に移住しました。
サングラスがトレードマークで、タランティーノやグザヴィエ・ドランといった映画監督からもラブコールを送られるほど支持されている監督です。
ウォン・カーウァイは「恋する惑星」について「一種のロード・ムービー」と言っており、その日撮る分のシナリオを当日に書き、その後撮影場所を決めた点もロード・ムービー的だったことをパンフレットで明かしています。
「恋する惑星」のヒロイン・フェイウォン
「恋する惑星」後半の物語のヒロイン・フェイを演じるのはフェイウォン。
当時歌手として活動していた彼女は、本作が映画初出演となりました。
彼女が歌う主題歌の「夢中人」は頭から離れなくなること間違いなしです。
ルックスも非常にかわいらしく、ちょっと不思議ちゃんでシャイな女の子・フェイの魅力を存分に引き出していました。
上野樹里とか木村カエラとか好きな人はたまらないと思う。
彼女は本作で、“香港アカデミー賞”とも称される香港電影金像奨(ほんこんでんえいきんぞうしょう)で主演女優賞にノミネート。
その後、ウォン・カーウァイ監督の「2046」にも出演しています。
「恋する惑星」の魅力を考察してみた
映画を観ていて「おもしろい」と思うことはあっても、「これはすごい!」と思うことはなかなかありません。
ですが「恋する惑星」には、今まで見たことないものがたくさん詰まっています。
「これから先、こんなに新鮮な気持ちにさせてくれる映画に何本出会えるだろう」
と思うぐらい、魅力にあふれているんです。
そんな「恋する惑星」不評の理由や魅力を考察してみました。
「意味不明」「つまらない」と言われる理由~監督の意図は?~
「恋する惑星」は高く評価されている一方で「意味不明」「つまらない」という意見もあります。
評価が分かれていると「実際のところ、どうなの?」と思いますよね。
私は「恋する惑星」はすごい映画だと思いますが、ストーリーに関しては「よくわからない」と思いました。
ネタバレは避けるので詳しくは書けませんが、登場人物の行動が突飛で、共感や理解ができる作品ではないんですよね。
ただ、この映画の魅力はストーリー以外の部分にあり、ストーリーが意味不明だからこそ映像表現に集中できたとも思っています。
また、本作の映画史での位置付けを考えたり、構造を分析しようとしたりする人もいることから「難解な映画」というイメージを持っている方もいるかもしれません。
こうした反応に対して監督は「単純な物語を作ろうとしただけ」とパンフレットで語っています。
この言葉が真意なのかどうかは監督のみぞ知る…といったところですが、あまり映画に関する知識がなくても楽しめる作品なので、無理に難しく考えず肩の力を抜いて観るのがおすすめです。
それでは「恋する惑星」の具体的な魅力について見ていきましょう。
「恋する惑星」の魅力①効果的に使われる音楽
「恋する惑星」の魅力といえば、まずは音楽。
特に後半の警官633号とフェイの物語では、「夢のカリフォルニア」と「夢中人」が繰り返し流れ、曲を聴くとこの映画を思い出すほど強烈な印象が残ります。
「恋する惑星」は当日に段取りを決める、いわば行き当たりばったりで撮影されましたが、使う曲だけは決まっていました。
監督はスタッフとのコミュニケーションに音楽を利用し、「夢のカリフォルニア」と「縁は異なもの」をスタッフたちに聴かせ、どんな映画を作ろうとしているか伝えようとしたそうです。
実はスタッフに音楽を聴かせて意図を共有する方法は、カナダ出身の映画監督グザヴィエ・ドランも用いています。
ドランは自身のドキュメンタリー「バウンド・トゥ・インポッシブル」でウォン・カーウァイの「花様年華」に衝撃を受けたと告白しており、もしかしたらこの方法も影響を受けたのかもしれません。
それでは「恋する惑星」で特に印象的な曲を聴いてみましょう。
夢のカリフォルニア
1曲目はママス&パパスの「夢のカリフォルニア」。
監督が「最初から使うことを決めていた」というだけあり、物語にも大きく関わる曲です。
劇中では小食店に勤めるフェイが店内に大音量で流しています。
気になっている警官633号がお店にやってきても音量を下げず、お互いの言葉を聞き返す始末ほどの大音量です。
その後も警官633号とフェイの関係を象徴するような使われ方をしていて、切ないようなうれしいような、もどかしい気持ちになります。
夢中人
2曲目はフェイ・ウォンが歌う「夢中人」。
原曲はイギリスのバンド・クランベリーズが歌う「Dream」です。
この曲は警官633号が留守の間に、フェイが勝手に部屋に入って模様替えをするシーンで主に流れます。
この場面がすごく不思議で、フェイはどこからどう見てもストーカーなのですが、不思議と怖さはないんです。
想像してみてほしいんですけど、部屋に置いていた水槽の中の魚が知らない間に増えていたらめちゃめちゃ怖いですよね?
フェイはそういう怖いことをしているのですが、この音楽が流れるからか、色使いや構図が魅力的だからか、フェイがかわいいからか、なぜか微笑ましいんですよね。
この映画は映像や音楽が感覚に訴えかけてくる部分が大きく、気付けば目と耳に身を委ねているような感覚で観ていました。
「映画ならではの映像表現を楽しみたいけど、いつもストーリーに頭をもっていかれてしまう」という人は、今までできなかった観方でこの映画を楽しめるかもしれません。
「恋する惑星」の魅力②見たことない構図と色使い
「恋する惑星」は、ほとんどがカメラを手に持った状態で撮影されています。
というのも撮影を行った重慶マンションの許可を得ておらず、一つのショットを短時間で撮っては逃げ、また忍び込んで撮っては逃げ…というのを繰り返していたからだそうですが、この不安定な画面が登場人物たちの関係を表しているようでいいんですよね。
ただ常に画面が手ぶれしているので、酔いやすい人は対策してから観た方がいいかもしれません。
普段酔わない私も酔いました。
観たことない構図ばかりというのも魅力で、画面を眺めているだけでおもしろいんですよね。
エスカレーターを上がる人の靴のアップとか、物と物の狭い隙間から映される登場人物とか、映画ではあまり見ない構図が多いです。
また画面手前の人物はスローモーション、奥は早送りになっている場面では、時間の流れがひどくあいまいで不思議な感覚に陥りました。
色使いも今までに見たことがなく「サイケ」だと尖りすぎ、「オシャレ」でも軽すぎ、という言葉で表すのが難しい絶妙さ。
香港の雑多な街並みともマッチしており、撮影場所の空気感が濃いんです。
この色使いはパンフレットでも再現されていて、この表紙を見て「お!」と思った方は映画も楽しめると思います。
「恋する惑星」の評価
映像表現のおもしろさが際立つ「恋する惑星」。
他の方はどのように評価しているのか、見てみましょう。
良い評価
- 今まで観た映画とは違う
- フェイ・ウォンがかわいい
- 映像、音楽、色彩が良かった
「恋する惑星」は、あまり見かけない構図や色使いが評価されています。
「この構図カッコイイ!」と普段思わない私でも「今の構図おもしろい!」と反応するぐらいなので、「今までとは違う映画が観たい」という方におすすめです。
いわゆる“アート映画”に近い雰囲気があるのかもしれません。
また主演のフェイ・ウォンがかわいいんですよね。
若い頃に観ていたら勢いで同じ髪型にしていたかもしれない。
このルックスだからこそ、あの奇天烈な行動も微笑ましくなったと思います。
悪い評価
- 前半の話がつまらなかった
- ストーリーがよくわからなかった
「恋する惑星」唯一の欠点といっていいのが、ストーリー。
特に後半の話は、登場人物の行動が理解できないだろう場面もあります。
何度も何度も観てる「恋する惑星」は、改めて数十年ぶりに大画面で見てもぼくの好きな「恋する惑星」でした。でも、これ、絶対に良さがわかんない人にはわかんないと思うの。ストーリーはそのものは酷いもの。
— 武田健 🚩👬「和の色を楽しむ 万年筆のインク事典」「はじめてのガラスペン」 (@kenkenbacky) August 21, 2022
前半は警官233号と金髪女性、後半は警官633号とフェイの話となっていますが、この二つの話に関連はありません。
後半に登場する警官633号とフェイが前半にちらっと出てきたり、警官233号とフェイが顔を合わせたりといったことはあるものの、基本的には別の話です。
一つの映画の中で複数の話が展開されると関連があるように思うので、少し混乱するかもしれませんね。
ただ「恋する惑星」はストーリーではなく、映像表現や音楽がメインだと思います。
登場人物に共感したい、ストーリーに感動したい、という方は、低評価になるかもしれません。
まとめ
映画「恋する惑星」のご紹介でした。
「よくわからない」とも言われる本作ですが、今までとは違う映画の観方を教えてくれる魅力あふれる作品です。
なぜこんなにも評価されるのか、考察してみるのもおもしろいと思います。
- ベリーショートの女の子が好き
- 今までとは違う視点で映画を観たい
- ストーリー以外の映画の楽しみ方を知りたい
という方におすすめ。
私は映画館で一度観てから、イラストを描くためにDVDでまた観たのですが、構図のおもしろさは映画館で観た時の方が際立っていたので、ぜひ映画館で観ていただきたいです。
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イラストキネマのオーナー、サオリでした。
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