こんにちは!
イラストキネマのオーナー、サオリです。
ご来館ありがとうございます。
今回は映画「流浪の月」をご紹介します。
原作は本屋大賞受賞作の同名小説。
誘拐事件の“被害者”とされた女の子、“加害者”とされた男の物語です。
うわべだけで物事を理解するのは難しく、先入観と思い込みによって真実がゆがめられていく様は決して他人事と思えません。
二人の間に何があったのか?
善意と好奇心につきまとわれ続ける二人はどこに行き着くのか?
主演の広瀬すずさん、松坂桃李さんはもちろん、横浜流星さんの演技や、感想について書きました。
監督 | 李相日 |
キャスト | 広瀬すず 松坂桃李 横浜流星 多部未華子 ほか |
製作年 | 2022年 |
製作国 | 日本 |
上映時間 | 150分 |
映画「流浪の月」あらすじ
雨の日に公園でびしょ濡れになっていた10歳の少女・家内更紗(広瀬すず)と、彼女に傘を差し出した19歳の大学生・佐伯文(松坂桃李)。
文の「うち、来る?」という言葉に更紗は頷く。
しばらくの間、二人は心休まる幸福な時間を過ごした。
だが二人の幸福な時間は、世間では誘拐事件として扱われ更紗と文は“被害女児”と“加害者”としてその後の人生を生きることに…。
大人になった更紗には結婚を約束している恋人・亮(横浜流星)がおり、文にもあゆみ(多部未華子)という恋人がいます。
一見幸せな生活をおくっているように思えますが、更紗も文も恋人に心を開いているように見えません。
更紗と文が抱えている傷だけでなく、亮の女性観についてもそれとなくわかるように映されています。
李相日監督
監督を務めるのは「フラガール」で日本アカデミー賞の作品賞、監督賞などを受賞した李相日(リ・サンイル)。
彼の監督作「悪人」は、モントリオール世界映画祭や釜山国際映画祭など海外の映画祭で上映され、国外でも評価されています。
アップで役者の表情をとらえることも有名ですね。
「怒り」でも広瀬すずさんを起用しており、現場で徹底的に指導したエピソードも有名です。
成人した更紗を演じる広瀬すず
誘拐事件の“被害女児”として常に好奇の目で見られる更紗を演じたのは、広瀬すずさん。
是枝裕和監督の「海街diary」で、日本アカデミー賞の新人俳優賞にノミネートされました。
その後も「三度目の殺人」や「ラストレター」などに出演。
ささいな表情や目の動きで感情を表せる演技力は圧巻です。
「流浪の月」の原作
「流浪の月」の原作は凪良(なぎら)ゆうさんの同名小説。
2020年の本屋大賞受賞作です。
本屋大賞は書店員が過去1年の間に自分で選んで読み「面白かった」、「お客様にも薦めたい」と思った本の中から選ばれます。
過去の受賞作「そして、バトンは渡された」、「蜜蜂と遠雷」も映画化されました。
凪良さんはBL(ボーイズラブ)作品も手がけています。
今でこそLGBTQなど性の多様性が認知されるようになりましたが、まだどこかで“普通じゃない”とされている雰囲気のある同性愛。
その同性愛の作品を発表されている凪良さんだからこそ、一言では言い表せない更紗と文の関係を美しく描けたのかもしれません。
「流浪の月」の感想:MVPは横浜流星!
広瀬すずさん、松坂桃李さんの目だけで心の内を語る演技に、観ている間は「すげぇ…!」という感想しか出てきませんでした。
ある出来事のせいで、他人に理解してもらったり話を聞いてもらったりすることを諦めている更紗と文。
そのあきらめが出るとき、二人の目は光が一切入らない暗い目になるんです。
同じ目をしている更紗と文が離れがたいことは、この目を見ればわかります。
文が大人の女性と関係を築けない理由が明かされるシーンも、松坂さんのガリガリの体型のおかげで説得力が増していました。
うわべの情報だけで判断する無責任な態度も、「流浪の月」のテーマの一つ。
結局みんな、自分が見たいようにしか見ない
更紗のそんなセリフからも、好き勝手に口出ししてくる外野に対する諦めが感じられます。
大学生の男が幼い女の子を連れ帰った
そんなニュースが流れたら、どんなことを想像しますか?
女の子が「何もされていない」と言ったら信じられますか?
その女の子と男が再会し頻繁に会っているとしたら、女の子にどんな言葉をかけますか?
おそらく多くの方が、この映画で“おせっかいな人”として描かれていた人たちと同じ行動をとるでしょう。
私もそう。
善意から口を挟んでくる人もいますが、それも二人にとっては「大きなお世話」でしかありません。
同じ状況で傍観者でいることは難しく、でも更紗と文の事情もわかるため板挟みになって非常に苦しかったです。
主演の二人も素晴らしかったのですが、個人的なMVPは更紗の恋人・亮を演じた横浜流星さん。
更紗を大事にしている理想的な恋人かと思いきや、とんでもない。
玄関のドアすら自分で開けず、家事ももちろんやらず、無意識に相手を見下しているから出るナチュラル上から発言に、
「あ、この男嫌い」
と思う女性は多いでしょう。
頭の中にある「その男には近づくなサイレン」が大音量で鳴り響いた。
発言と行動がひたすら不快で出てくるたびに神経を逆なでしてくる演技と、憔悴したときの変貌ぶりは絶賛されています。
自暴自棄になった人間特有の、何をしでかすかわからない怖さもありましたね。
ただ亮がこうなってしまった原因はうっすらわかる程度に描かれており、「もしこの原因がなかったら…」と考えてしまいます。
この最低限の説明を、説明っぽくなく映像に織り込んでいる点も、「流浪の月」のいいところですね。
「流浪の月」の評価
キャストの演技が光った「流浪の月」。
他の方はどう評価しているのか、見てみましょう。
高評価
- DVシーンがリアル
- デリケートな問題を丁寧に描いている
- 役者の最大限の演技が引き出されていた
好奇の目にさらされる事件の当事者や性的嗜好など、繊細な問題を扱っている本作。
当事者たちが明かさない心の内をジャッジすることなく映す姿勢は、とても好感が持てました。
こんな風に更紗と文の話を聞いてくれる人がいたら良かったのに…。
感想でも述べましたが、キャストの演技がみなさん素晴らしかったです。
原作を読んだ方も演技を高く評価しており、登場人物の心情をつかんでいたことがわかります。
低評価
- 上映時間が長いわりに説明不足
- 最初から最後まで胸が痛かった
- 更紗の心情をもう少し描いてほしかった
上映時間は2時間半と長めなので、途中で疲れる人もいるかもしれません。
大人の女性のあゆみが文を好きになった理由や、更紗と文の行動に疑問を感じる場面もありましたが、映画の進行上仕方ないのかなと。
原作を読んでいない立場としては、表情や目の動きなどで充分説明はできていたように思います。
原作を読んだ方からは
- 更紗の両親について(特に母親との関係)
- 文が経営するカフェの店名「Calico」の意味
などが省かれていたという声がありました。
原作に思い入れがあると、低評価まではいかなくても引っかかりを感じるようです。
まとめ
映画「流浪の月」のご紹介でした。
主演の二人はもちろん、横浜流星さんが意外とクズ役にはまっていましたね。
ああいう役を引き受けるのはイメージダウンにつながる可能性があるため、リスキーな選択だったと思います。
画面越しにクズを見るのが大好きな私としては「ありがとう」を100回言っても足りないぐらい良かったです。
令和のクズ役界のスターは君だ!!
李相日監督作ということで注目を浴びており、Twitterで「流浪の月」と検索すると感想をたくさん読めるので、気になった方はそちらも見てみてください。
原作のファン
クズい横浜流星を見たい
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イラストキネマのオーナー、サオリでした。
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