
こんにちは!
イラストキネマのオーナー、サオリです。
ご来館ありがとうございます。
今回は映画「さかなのこ」をご紹介します。
さかなクンの自叙伝が原作のため、主人公・ミー坊のモデルも当然さかなクンです。
そのミー坊を演じたのんさんが「ハマり役!」と絶賛されています。
- なぜ男性のさかなクンを、女性ののんさんが演じたのか
- さかなクンはどんな役で出演しているのか
- 「さかなのこ」を観た感想
- 第二のさかなクン?が描いたパンフレットの付録・魚図鑑
などについて書きました。
最後まで読んでくださるとうれしいです。
監督 | 沖田修一 |
キャスト | のん 柳楽優弥 井川遥 さかなクン ほか |
製作国 | 日本 |
製作年 | 2022年 |
上映時間 | 139分 |
映画「さかなのこ」あらすじ
子どもの頃から魚が大好きなミー坊(のん)は、優しい母・ミチコ(井川遥)と周囲の人々に見守られ、のびのび育っていく。
大人になったミー坊は、水族館、お寿司屋さんと魚がいるところで働くが「なにか違う」と悩んでいた。
そんな時、ミー坊は学生時代の友人・ヒヨ(柳楽優弥)と再会する。
みなさんご存じさかなクンの自叙伝を元にした本作。
“好きに勝るもの、なしでギョざいます!”を地で行くミー坊がまぶしく、うらやましさを感じる映画です。
共同脚本も務めた監督・沖田修一


本作の監督は沖田修一さん。
「南極料理人」や「横道世之介」などを監督しました。
沖田監督は本作について
僕たち大人には、さかなクンみたいに生きてみたいという憧れがあるんですよね。
そういう憧れを持って作ったこの映画が、大人だけでなく子供にとっても、忘れられない映画の一つになったらうれしいです。
「さかなのこ」パンフレット
とコメント。
のんさんがイシガキフグの世話をする冒頭のシーンは、さかなクンのお願いに応えたもので「撮影しているうちに魚の気分がわかるようになった」と話しています。
共同脚本を務めた前田司郎さんとは中学時代からの仲で、高校時代には「アカデミー部」という部で前田さんが監督・脚本、沖田さんが役者として活動していたそうです。
「さかなのこ」原作はさかなクンの自叙伝
映画「さかなのこ」の原作はさかなクンの本「さかなクンの一魚一会 まいにち夢中な人生!」。
さかなクン初の自叙伝です。
この本には、さかなクンの幼い頃の写真も載っており「幼魚のさかなクン」「成魚のころ」とキャプションにもさかなクンらしさが詰まっています。
沖田監督は「映画でしかできないことを考えたので、原作から飛躍した部分もある」と明かしていますが、映画を観たさかなクンはとても喜んでいたそうです。
脚本を事前に読ませていただいていたんですけれども、映画として観ると、全然世界観が違っていました。
小さい頃、行ったことのない場所へ自転車で冒険したときの、
どんなお魚に会えるんだろう?
どんな人に会えるんだろう?
どんな光景が見られるんだろう?
というようなドキドキワクワクがありました。
「さかなのこ」パンフレット
原作を読んだ人も、読んでいない人も楽しめる映画となっています。
「さかなのこ」主演・のん!性別を超えたキャスティングの理由
「さかなのこ」の主人公・ミー坊を演じるのは、のんさん。
「さかなクンは男性なのに、なぜ女性ののんさん?」と思う方もいるでしょう。
ミー坊はさかなクンをモデルにしていますが、沖田監督が目指したのは何かを猛烈に好きになった人の映画で、そこに性別は関係ないんですよね。
映画の冒頭、パンフレットの表紙裏にもその想いは表れており、台本の読み合わせの際にも
「男か女かは、どっちでもいい」
と書かれた紙がホワイトボードの真ん中に貼ってあったそうです。
実際に映画を観て、キャスティングに違和感を感じるどころか、「のんさんにしか演じられない」と思いました。
のんさんをキャスティングした理由について沖田監督は「どっかさかなクンと似てる(から)」と明かしています。
確かにさかなクンとのんさんの、内に秘めたパワーがすごそうなところとか、無邪気なところとか、なんとなく通じるものがありますよね。
二人は番組のロケで会ったことがあり、のんさんは「パワーのみなぎり方が自分と似ている」と思ったそうです。
ちなみに二人はお互いのYouTubeチャンネルでも共演しており、キャスティングが決まった時のことについても語っています。
さかなクンも出演!「さかなのこ」のキーマン・ギョギョおじさんはこんな人
「さかなのこ」には、さかなクンも「ギョギョおじさん」という役で出演。
ギョギョおじさんはミー坊の近所に住んでいる、魚が大好きなちょっと変わった無職のおじさんです。
子どもたちの間では「ギョギョおじさんの前で親指を隠さないと親の死に目に会えない」という都市伝説が流れ、なんとなく避けられています。
こういう変わった人、皆さんの周りにもいませんでしたか?
私が昔住んでいたところには、駅前でヘッドフォンをつけたまま大声でミスチルを歌うミスチルおじさんがいました。



すさまじく音痴だった。
このギョギョおじさん、さかなクンのもう一つの未来として妙な生々しさがあるんですよね。
共同脚本の前田さんは「ギョギョおじさんは、さかなクンの影というか、もしも歯車が一つズレていたらどうなっていたのかな」と想像して書いたことを明かしています。
ちなみにギョギョおじさんの登場シーンで流れる音楽のバスクラリネットを演奏しているのは、さかなクン本人です。
「さかなのこ」の感想:見逃さなくて良かった!


実は私は「さかなのこ」を観るつもりは全くありませんでした。
熱心なさかなクンのファンでもなく、予告編から漂うほのぼのした雰囲気に「あー心温まる系のやつね、ハイハイ」なんて観てもいないのにわかった気になっていたので、圏外ぐらいに思っていたんですね。
ところがTwitterでえらく評判が良く、それも「良かったよ~」ではなく「傑作!!」ぐらいのテンションで絶賛されていたので、さすがに気になり映画館に足を運んだ次第。
実際観に行って、すごくいい映画だと思いました。
具体的にどのあたりが良かったのか、感想とともに見ていきましょう。
偉大な母の愛


一番感動したのが、ミー坊の母親・ミチコの愛!
ミチコがありのままのミー坊を受け止め優しく見守っていたからこそ、ミー坊はミー坊のままでいられたんです。
周りの子どもと違うミー坊を心配する父親と時には対立しますが、それでもミー坊を信じ続ける姿勢には胸打たれました。
この子はお魚が好きで、お魚の絵を描いて、それでいいんです
予告編にもある、高校での面談シーンのこのセリフは、今聞いても涙が出ます。
演じている井川遥さんの目がすごい優しいんですよ。
ミー坊を応援するミチコの驚愕の真実が終盤で明かされ、そこでも母の愛の大きさを再認識させられます。
本当の“好き”って、きっとこういうこと


ミー坊は魚が好きですが、魚に見返りを求めたりしません。
「おさかな博士になる」という夢は持っているものの、「おさかな博士になって有名になりたい」といった欲は持っていないんですね。
理由なく、ただただ好きなんです。
“好き”という感情は測れませんし、「本当に好きかどうか」なんてジャッジするものでもありません。
とはいえ、ミー坊の魚に対する“好き”は、普通の人の“好き”とは明らかに次元が違うんです。
沖田監督が「大人には、さかなクンみたいに生きてみたいという憧れがある」と語っていたように、猛烈に何かを好きになりたいと思っている人は多いでしょうし、私も思っています。
ですが、猛烈に何かを好きになれば、きっと普通の生き方はできません。
人から変な目で見られたりバカにされたり、理不尽な目に遭う回数は普通の人より多そうです。
それでも自分の気持ちを貫けるのが、“本当に好き”ってことなのではないでしょうか。
猛烈に何かを好きになることの闇も見せている


「さかなのこ」はミー坊のサクセスストーリーでもありますが、ギョギョおじさんのような、何者にもなれなかった大人が出てきます。
おそらくギョギョおじさんのような人は現実にたくさんいて、有名になったり好きなことを仕事にできたりしている人はほんの一握りでしょう。
ギョギョおじさんはコミカルに描かれているので、それほど深刻な雰囲気にはならないものの「さかなクンのもう一つの未来」と考えると、ちょっと笑えなくなります。
ギョギョおじさんは、魚を好きになっていなかったら普通に暮らしていたかもしれません。
猛烈に好きなものがある人は幸福に描かれがちですが、そのせいで社会に溶け込めなくなることもあると示している作品はあまり見かけないので、驚きましたね。
こういった、猛烈に何かを好きになることの闇もきちんと見せている点に、非常に好感を持ちました。
「さかなのこ」パンフレットの付録・魚図鑑がすギョい!魚譜画家・長嶋祐成さん
「さかなのこ」のパンフレットには魚図鑑が付いており、映画に登場した10種類の魚について書かれています。
この魚図鑑の絵を描いたのは、魚譜(ぎょふ)画家の長嶋祐成さん。
魚譜とは、魚類を観察して描いた絵のこと。
魚を「きれい」「かわいい」と思ったことがない私でも見惚れるぐらい、長嶋さんの魚譜は美しいです。
長嶋さんは会社員として働いていましたが、2016年から魚譜画家を本業とし、石垣島に移住。
ブログでは石垣島で出会った魚などのイラストを載せています。
長嶋さんの魚譜を見て「今まで気づかなかったけど、魚って美しいのかもしれない」と思いました。
描き手が対象に魅力を感じながら描いた絵には、人を惹きつける何かが宿るんでしょうね。
長嶋さんは魚図鑑を出版しており、「付録じゃ物足りない」という方はこちらもおすすめです。
パンフレットには出演者のインタビューはもちろん、監督とさかなクンの対談やミー坊新聞なども収録されており、かなり読み応えがあります。
映画を観て気になった方は、ぜひ手に取ってみてください。
「さかなのこ」の評価
“好き”を貫くミー坊がまぶしい「さかなのこ」。
他の方はどう評価しているのか、見てみましょう。
良い評価
- ミー坊のお母さんすごい!
- ミー坊とヤンキーのやりとりがおもしろかった
- キャスティングがいい。特にのんがハマり役だった
ミー坊をありのまま受け入れるお母さんに感動した方が多かったようです。
キャスティングを評価する声も多く、特に主役を演じたのんさんについては「彼女にしか演じられない」と絶賛されています。
性別を超えてキャスティングされたのも頷けますね。
また「さかなのこ」はコミカルなやりとりも見どころの一つで、ミー坊とヤンキーの会話は特に笑えます。
ワルぶっているものの、根はいい子感があるヤンキーがミー坊に毒気を抜かれていて微笑ましいです。
ヤンキー含めミー坊の周りには、ミー坊を受け入れ支えてくれる人がいたことを描いている点も、この映画のいいところ。
ミー坊がすギョいのはもちろんですが、周囲の人あってのミー坊であり、才能ある人がみな理解され花開くわけじゃないことを見せているのは、めずらしいと思います。
必ずしもポジティブな事柄ばかりの話しではなく、悲しみや苦しさも背景には見え隠れしている。それでも主人公ミー坊のひたむきに好きでいる姿が周りの人たちに伝播していくのが尊いんだよね。主役はミー坊だけど周囲の人がいてこその映画なんだよなぁ。
— ととと (@TO_T0_T0) September 11, 2022
自分、この映画好きすぎるな…#さかなのこ
悪い評価
- セリフや演出がわざとらしい
- 男性を女性が演じるのは違和感がある
- ミー坊のお母さんの教育方針が理解できない
「ミー坊はのんにしか演じられない!」と絶賛されている一方で「違和感がある」という意見も。
「さかなのこ」は「男か女かは、どっちでもいい」という言葉から始まるのですが、これが逆効果になってしまったようです。
この言葉について私は、最初に「性別は関係ない」と示しておくことで入りやすくなったと思いう一方、「説明的すぎる」とも感じました。
「さかなクンの映画」ではなく「猛烈に何かを好きになった人の映画」として観ると、評価も変わるかもしれません。
またミー坊がギョギョおじさんの家に行くことについて、ミー坊の両親が揉めるシーンでは「知らない人の家に行くことを許可するお母さんはちょっと…」という声がありました。
ギョギョおじさんは不審者ではないのですが、実際に子どもが不審者扱いされている人の家に一人で行くことを許可するのは、危なすぎますよね。



私も観てて心配になった。
あの結末になったからお母さんの教育方針は正しかったといえるものの、違う結末、それこそミー坊がギョギョおじさんになっていても同じことがいえるかというと…正直難しいかな、と思いました。
まとめ
映画「さかなのこ」のご紹介でした。
幼い頃から魚が大好きなミー坊は、のんさん以外には演じられなかったと思います。
さかなクンをモデルにはしているものの、ミー坊とさかなクンは別の人物。
何かを猛烈に好きになった人の姿はまぶしく、うらやましさもおぼえますが、好きだからこそ苦しくなることもあります。
それでも“好き”を貫くミー坊の底抜けのエネルギーに巻き込まれ、ミー坊を支える人たちの温かさに包まれる、そんな映画です。
- さかなクンが好き
- 性別を超えたキャスティングが気になる
- 何かにのめり込んでいる人の物語が観たい
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イラストキネマのオーナー、サオリでした。
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