こんにちは!
イラストキネマのオーナー、サオリです。
ご来館ありがとうございます。
今回は映画「FRANK フランク」をご紹介します。
ひょんなことから変わったバンドに加入することになった、ごく普通の青年・ジョンが主人公の物語です。
バンドのリーダー的存在・フランクは常にマスクを被っており、お風呂に入る時も寝る時もマスクを外しません。
そんな変わり者のフランクの音楽の才能に惚れ込んだジョンの苦悩とバンドメンバーの衝突を、コメディタッチで描いています。
これは、音楽で心の繋がりを求める人々の
可笑しくてほろ苦い物語。
「世間には理解されない人たちの物語」として観ると少し救われた気持ちになりますし、才能を持っていない人の視点で観るとなかなか厳しい面もあります。
私の感想や、フランクのモデルといわれているフランク・サイドボトムについて書きました。
監督 | レニー・アブラハムソン |
キャスト | レニー・アブラハムソン ドーナル・グリーソン マイケル・ファスベンダー マギー・ギレンホール ほか |
製作国 | イギリス・アイルランド合作 |
製作年 | 2014年 |
上映時間 | 95分 |
映画「FRANK フランク」あらすじ
ミュージシャンへの憧れを捨てきれない青年・ジョン(ドーナル・グリーソン)は、ひょんなことから変わったバンドに加入することに。
バンドのリーダー・フランク(マイケル・ファスベンダー)は常に奇妙な被り物をしているが、音楽の才能がありメンバーから信頼されていた。
ジョンは「バンドが売れるために」と動画サイトにバンドの映像を投稿。
それが話題となり大型フェスに招かれるが、徐々に雲行きが怪しくなっていく。
映画のメインは、ジョンとバンドメンバーのいざこざ。
どこまでも邪険にされるのにめげないジョンに同情しつつも、コミカルなシーンがあるのでさほど悲壮な雰囲気はありません。
才能を持っている人・持っていない人それぞれの苦悩も描いており、何度でも楽しめる映画です。
レニー・アブラハムソン監督
「FRANK フランク」の監督はレニー・アブラハムソン。
監督作「ルーム」はアカデミー賞4部門にノミネート、トロント国際映画祭で観客賞を受賞しました。
「ジョジーの修理工場」もカンヌ国際映画祭の監督週間で上映され、国際芸術・実験映画連盟賞を受賞。
フランクを演じたマイケル・ファスベンダーは、この作品について「大好き」とコメントしています。
主人公のジョンを演じるドーナル・グリーソン
「FRANK フランク」の主人公・ジョンを演じるのはドーナル・グリーソン。
「スター・ウォーズ」のハックス将軍役や「ハリー・ポッター」のビル・ウィーズリー役で有名です。
AIをテーマにした「エクスマキナ」では主役を演じています。
ドーナルは「FRANK フランク」について
元々、僕は原案のジョン・ロンスンのファンだったんだ。
脚本は、読んで声を上げて笑うほど面白いと感じた。
「FRANK フランク」パンフレット
と脚本の時点で好印象だったそうです。
「FRANK フランク」のモデル:フランク・サイドボトム
常にマスクを被っているフランクには、実はモデルがいます。
イギリスの音楽コメディアン、フランク・サイドボトムことクリス・シーヴィーです。
共同脚本のジョン・ロンスンは、このフランク・サイドボトムのバンドでキーボードを担当したことがあり、主人公のジョンと自分を重ねているのかもしれません。
クリス・シーヴィーは2010年にガンを患い54歳で他界。
2019年にはイギリスでドキュメンタリー映画「Being Frank: The Chris Sievey Story」が公開されました。
彼のお葬式の費用は友人やファンが出し、映画の制作費用は募金、クラウドファンディングで集めたことからイギリスで人気があることがわかります。
フランクのモデルについては公式の情報では確認できなかったのですが、このマスクを見ればモデルとみて間違いないでしょう。
また、音楽についてはダニエル・ジョンストン、キャプテン・ビーフハートというミュージシャンをモデルにしているのではないか、といわれています。
メンバーが好き勝手に演奏しているのかと思いきやそこまで破綻しておらず、ぎりぎり曲としてまとまっている感じは、確かに「FRANK フランク」で演奏される曲と似ています。
ダニエル・ジョンストンについてはドキュメンタリー映画「悪魔とダニエル・ジョンストン」が制作されており、DMMでDVDをレンタルできます。
「FRANK フランク」の感想
「FRANK フランク」は2014年に公開された映画の中で個人的ランキングをつけるなら1位、というぐらい私のお気に入りです。
たまたまこの映画を観た時期の私は、「これをやるなら絶対ここにたどりつかなきゃいけない」という、ちょっと妙な思い込みにとらわれていて、自分で自分を追い込んでいるような状態でした。
「水泳をやるならオリンピックに出場しなければ」みたいな、そんなできるわけもない、そもそも自分がそうしたいのかも考えずにハードルの高い目標を設定していたんですね。
ですがこの映画を観て「何がいいかは人それぞれだし、世間でいいとされていることが万人にとっていいわけではない」ということに気づけて、自分の気持ちを素直に受け止められるようになった、という思い出があります。
ちなみに2014年は私の中で当たり年で、今でも「あの映画良かったなー」と思い出す映画がたくさん公開されました。
- 感動がじんわりやってくる「闇のあとの光」
- 踊らないインド映画「めぐり逢わせのお弁当」
- 新ジャンル“拷問コメディ”を確立した「オオカミは嘘をつく」
- 究極の二次元オタクの残酷な初恋「鑑定士と顔のない依頼人」
- 爆弾魔のおじいちゃんがマフィアと戦う「100歳の華麗なる冒険」
- 見たことない景色なのになぜか懐かしい「グレート・ビューティー」
- 最高の映画監督デヴィッド・フィンチャーの血みどろコメディ「ゴーン・ガール」
これらをおさえての1位ですから、相当なものです。
なので今回の感想、ちょっと長め。
こう書くとすごい期待させてしまうかもしれませんが、私がこの映画を気に入っているのは映画の内容と観た時の自分の状態がちょうど合致していたからです。
そのためあまり期待せず、気軽な気持ちで楽しんでいただけたらと思います。
魅力①欠けているからこそ、一緒にいて輝ける
フランク率いるバンド・ソロンフォルブスは、フランクが音楽制作を一手に引き受けているように見えます。
フランクは音楽の才能に恵まれており、だからこそ一癖も二癖もあるバンドメンバーはフランクに従っているんですね。
ところが終盤、フランクの音楽制作にはバンドメンバーとマスクが欠かせないことがわかります。
世間一般の考え方からすれば「マスクを外すべき」となるのでしょうが、マスクを被ることによってフランクはフランクでいられるんです。
バンドメンバーも社会不適合者といいますか、独特の雰囲気があります。
彼らはただフランクにぶら下がっているのではなく、演奏でフランクを支え、フランクの音楽を形にしていたんです。
この関係が私はすごく好きで、およそ音楽以外のことをまっとうにできると思えない人同士が集まって演奏する姿は惹きつけられるものがあります。
音楽でしかつながれないいびつさがパズルのピースのようにはまって、「どんな人であろうと理解してくれる人はいるかもしれない」という希望を感じさせてくれるんです。
魅力②「I Love You」が刺さる
このバンドメンバーだからこそフランクと音楽を作れていたことは、映画のラストに演奏で示されます。
フランクの頼りない歌に楽器で応え、徐々に音楽として形をなしていく様は何度観ても感動しますね。
この時演奏される曲が「I Love You All」。
「I love You」なんて映画や音楽で数え切れないぐらい耳にしてきましたけど、生まれて初めて心に刺さりました。
「このメンバーじゃないとダメなんだ!」とわかってからの「I Love You」は、ラブストーリーでささやかれるそれとは比べものにならないほど説得力があります。
「I love You」なんて散々使い古された、もはや意味なんてない言葉ぐらいに思っていたのに、まさかこの言葉に感動する日が来るなんて…!と衝撃でした。
魅力③才能を持たざる者の厳しい末路
「FRANK フランク」の主人公・ジョンは、ミュージシャンになる夢を諦めきれない青年。
フランクと出会う前から曲を作っていますが、なんだかパッとしません。
そんなジョンがフランクと出会い「もしかしたらミュージシャンとしてやっていけるかも!」と舞い上がっちゃうんですね。
フランクたちに多額のお金を出し、隙あらば自身の曲をフランクに売り込み認めてもらおうとします。
そんなジョンですからバンドメンバーからはうとまれ、あからさまに嫌われるのですが、それでもめげません。
こうやって書くとなんだかジョンが空気読めない人みたいですが、ジョンがしていることは売れるために必要なことです。
ジョンがすべきだったのは「売れることがこのバンドにとっての成功なのか?」と考えることでしたね。
ジョンの生い立ちは詳しく明かされませんが、おそらくこれといって不自由のない平凡な人生を歩んできたのだと思います。
自宅に音楽機材がそろっていたことから、あまりお金に困ったこともないのでしょう。
ミュージシャンへの憧れはあれど、歌いたいことや伝えたいことがなく、音楽ができなくても生きていけるんです。
一方フランクは、常にマスクを被っている点からも“普通”ではなく、音楽でしか満たされないなにかがあったのだと思います。
この“欠乏”が、才能を持つ者と持たざる者に分けるのではないでしょうか。
ジョンの立場で観ると厳しいラストですが、こうした厳しい面も描いてくれている点は非常に好感が持てます。
「FRANK フランク」の評価
ただのコメディ映画ではない「FRANK フランク」。
他の方はどのように評価しているのでしょう。
高評価
- 劇中の曲がいちいちいい
- コミカルなシーンがおもしろい
- 天才と凡人の違いがよくわかる
バンドやミュージシャンが出てくる映画で欠かせないのが音楽。
音楽がいいかどうかが映画の評価にも大きく関わってきますが、「FRANK フランク」は劇中の曲もちゃんといいです。
主題歌の「I Love You All」は、私の映画音楽プレイリストで堂々の再生回数1位の座に輝いています。
コメディシーンもちゃんとおもしろく、特にフェス前日にフランクが新曲をバンドメンバーに披露するところは笑いが止まりません。
他にもお葬式のシーンや、フェス直前のフランクの変身なども笑えるので、コメディ映画が好きな人にもおすすめです。
低評価
- 凡人が観るのは辛い
- 万人ウケはしなさそう
- 音楽や演奏をもう少し聴きたかった
「FRANK フランク」は凡人と天才の違いを浮き立たせているので、ジョンのように「自分には才能がない」と思っている人や、挫折した経験がある人にとっては辛いかもしれません。
フランク、オフビートな笑いも画面のデザインもファス以外の役者も全部めっちゃ好きな映画なんだけど、油断してたらめちゃくちゃ残酷な天才と凡人の話で見終わってすごい落ち込んだ。好きだけど
— みそぐち (@misoguchi16) July 13, 2022
村上龍さんの小説「ストレンジ・デイズ」の主人公に感情移入して心を痛めた人は、観るのに覚悟が必要です。
音楽を軸にした映画ですがメンバー同士の葛藤や曲作りのシーンが多く、1曲丸々演奏するシーンはありません。
これは私も残念に思いましたね。
ただ演奏を途中で中断したり、そもそも演奏ができなかったりといったハプニングも「このバンドらしいな」と思えるので、これが原因で低評価になるほどではなかったです。
まとめ
映画「FRANK フランク」の登場人物のモデル、感想について書きました。
魅力は伝わりましたか?
実は公開当時は、フランク・サイドボトムなどをモデルにしていることを知りませんでした。
「こんな自分でもなにか才能があるはず!」と信じたかったものの、才能なんてないことにうすうす気づいていた時期に観たので「才能がある人からしたら私ってこんな感じなのかぁ」と落ち込んだことをおぼえています。
ですが映画が終わった後は心がほんのり温かくなって、落ち込んでいるのに晴れやかな気持ちになった思い出深い映画です。
- コメディ映画が好き
- バンドの内部事情を見てみたい
- 「君には才能がない」と引導を渡してほしい
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イラストキネマのオーナー、サオリでした。
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